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​全ゲノム検査の概要

DNA

全ゲノム検査とは

 遺伝子は生命の設計図と表現されます。人間の体はタンパク質でできていますが、そのタンパク質はアミノ酸が連なり立体的になることでできているものです。そのアミノ酸の配列は遺伝子の配列を元に決定されます。人の目の形が違うのは遺伝子配列が人によって異なるからです。

 遺伝子はDNA上のA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4つの化合物(塩基)の組み合わせで書かれています。人の遺伝子はATCGの文字配列が約30億塩基あると言われています。つまり人の設計図は30億のA 、T、C、Gの文字で書かれているということになります。この遺伝子配列を調べるのにはかつて15年間の歳月を要しました。しかしながら次世代シークエンサー(NGS)と呼ばれる技術発達により、現在ではこの30億の遺伝子配列は1日で調べることが可能となり、ここ10年で人の病気の解明に大きな役割を果たしてきました。これらの多くは研究として行われてきましたが、いよいよ医療現場でも実際の患者さんに対して遺伝子検査をする時代が到来し、医療は大きく変わろうとしています。

 ヒトのDNAを解析するとタンパク質の設計情報を記した領域(転写領域)と遺伝子を機能的に動かすための領域(非転写領域)があり、転写領域には約25,000の遺伝子が含まれています。「全ゲノム検査」はこの約25,000の遺伝子全てと、その周辺領域、非転写領域の全て(30億の塩基)を調べるものです。現在、遺伝子解析には全ゲノム検査の他「一部」を調べる「パネル検査」というものもあります。これまではDNA解析装置やコンピュータパワーの限界から「パネル検査」が主流でした。例えば、保険適応が通ったがん遺伝子パネル検査では、癌によくみられる数百種類程度の遺伝子だけに絞ってその差異を調べるため、解析しやすく比較的安く行うことができますが、対象遺伝子を絞っているため疾病の本当の原因が見つからないこともあります。

 このためDNA解析装置やコンピュータの進化とともに今後は「全ゲノム検査」が主流になっていくものと考えられます。全ゲノム検査はパネル検査では見つからない疾病の本当の原因が見つかったりヒトの体の特徴や変異が網羅的にわかることが期待されますが、解析データが大量となるため、その解析技術レベルの高いところで検査することが重要となります。当院での全ゲノム検査は人の遺伝子配列の全てを検査対象としており、大量のデータをcBioinformatics社の高いデータ処理技術を用いて解析を行います。当院での全ゲノム検査は一度の検査で「全ての遺伝子配列」が分かります。

 

 全ゲノム検査は文字通り「全て」の遺伝子情報を取得する検査です。つまりは自分の設計図を一文字も欠けることなく知る検査です。自分の設計図を知ると言うのは、自分の体の特徴を知ることになります。

全ゲノム検査を行う意義

 上述のように全ゲノム検査は自分の設計図を全て入手する検査です

設計図を元に自分の身体の特徴を把握し、生活していくことを意味しています。今までは「50歳になると代謝が落ちてコレステロール値が上がりやすい」「歳をとると胃癌になるかもしれないから内視鏡をしましょう」というのが健康促進で言われていることでした。

しかしながら、全ゲノム検査により自分の設計図を知ることで「自分は胃がんに罹りやすいから胃カメラを若いうちから受けてこう」など自分の身体の特徴に合わせた健康維持を計画することができます。

 

 私たちは父からの精子と母からの卵子が出会い受精卵となって生命として誕生します。その後、出産を経てヒトとしての人生を開始していく訳です。人の目鼻の形や手の形が異なるのは主に遺伝子の配列が人によって異なるからです。個々人の遺伝子配列の違いを「遺伝子多型」と呼びます。ごく簡単に言うと、「遺伝子多型」は持って生まれた個々人の差と言えます。

ゲノム検査を行う意義

 持って生まれた遺伝子の違いのことを専門的な言葉では「生殖細胞遺伝子多型」と呼びます。

 生殖細胞遺伝子多型によって、特定の疾患にかかりやすいことが様々な研究を通してわかってきています。遺伝子多型は、ほぼ全てのヒトが持っているものです。それは目鼻の形が異なるのと同じことで、個性とも言えます。ゲノム検査を行うことで、どういう遺伝子多型があるかを知り将来どういうことが起こりうるのかを予測することができます。

 遺伝子の疾患の発症に関してですが、

1) 一つの遺伝子が原因で発症するリスクがあがる疾患

単一遺伝子疾患)と、

2) 複数の遺伝子が関与して発症するリスクがある疾患

(多遺伝子疾患)    があります。

 

単一遺伝子疾患はいわゆる希少難病疾患が多くを占めます。一方で多遺伝子疾患は複数の遺伝子が作用し、さらに生活習慣などの環境要因が加わって起こる病気で多くの疾患がこれに属します。高血圧や糖尿病、がんなどが代表的な例です。

単一遺伝子疾患・多遺伝子疾患

 特に複数の遺伝子が関与して発症するリスクがある疾患(多遺伝子疾患)についてはGWAS(ゲノムワイド関連解析)という手法を用いた検査になります。これは病気になりやすい人となりにくい人の遺伝子を比較して、どれくらい特定の病気のなりやすいかを予測する手法です。

 

 この手法を用いると、例えば「平均的な人よりも高血圧に1.5倍なりやすい」といった結果が得られます。ただし、これは複数の研究結果であって、その後の生活によって発症リスクは異なり、他の強力な遺伝子多型によってはそれらが原因となってしまうこともあります。

 

 病気によって異なりますが、病気の発症には遺伝子要因によるものが約30%*、生活習慣などの環境要因によるものが約70%と言われています。ゲノム検査を行って、遺伝子変異が見つかったからといって必ず発症するものではありません。同じ遺伝子多型を持っていても発症する人と発症しない人がいることがわかっています。

 

 当院では個々に必要な生活習慣を取り入れたり、定期検診で重点的にチェックする部位を特定することで、病気の予防や早期発見に役立つと考えております。

 当院では

1) GWAS(ゲノムワイド関連解析)を用いた病気のなりやすさの予測

2) 単一遺伝子多型を用いた薬剤アレルギー予測

を提供しています。
 

*代表的な疾病(大腸癌、胃癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、冠動脈性心疾患)における遺伝要因と環境要因の平均的な割合です。

[出典]

N Engl J Med.2000 Jul 13;343(2):78-85.

Int J Cancer 2002,;99(2):260-6./Genet Epidemiol 2001; 20(1):107-116

Eur.J.Hum.Genet. 2007; 15(8):872-7./Circulation 1980; 61(3): 503-8

全ゲノム検査の解析結果の質

全ゲノム検査の解析結果の質

 全ゲノム検査は、ATCGのDNAを抽出した後、これを解析して疾病リスクを予測しますが、疾病リスクを予測する方法については現時点では標準化された方法はありません。

 

 したがって、本来変異として判断するものだけを変異として判断しているか、予測に使うゲノムデータベースが最新のものか、欧米人とゲノムの特異性がかなり異なる日本人のゲノムをベースに判断されたものか等により結果が異なってしまいます。

 

 また、検査会社は解析した遺伝子情報と研究成果が蓄積されたゲノムデータベースを照らし合わせた解析パイプラインを構築して疾病のリスクを予測しますが、新しくゲノムと疾病の因果関係が発見されたような場合、これに合わせて解析パイプラインを最新のデータベースに更新することにより、過去に解析した疾病のリスクも変化していきます。

 このように現時点では分かっていないことも、研究の進化により将来結果が変わりうるという点も踏まえ、ビックデータを効率的に臨床知識・臨床経験で雑音をふるいにかけながら解析することができ、常に最新のデータベースを使うことができる検査会社を選ぶことが重要です。

全ゲノム検査「Cゲノム」

 当院が提供する全ゲノム検査は、cBioinformatics株式会社による「Cゲノム」になります。

C Genomeロゴ

cBioinformatics株式会社が提供する「Cゲノム」は外部委託先を通じて(イルミナ社のシーケンサーにより)DNA配列を抽出します。その後、DNA配列からバリアント(ヒト毎に個性のある遺伝子配列)、病的な遺伝子変異、病的な変異でない可能性が高い遺伝子多型の抽出、遺伝子変異とデータベースとの照合による疾病リスクの計算を、cBioinformatics株式会社が独自に開発したソフトウェア及び研究論文などで実績のある公開ソフトウェアを用いて行っております。

cBioinformatics株式会社は大規模医療機関で経験を積んだ腫瘍内科医(癌の専門医)山口医師を代表とし、国内トップの研究機関からのゲノム研究解析の依頼により、cBioinformatics株式会社でしかできない解析を数多く行ってきた実績があります。

 

cBioinformatics株式会社はこれらを通じて培ってきた最先端の遺伝子解析技術を基に独自解析ソフトウェアを開発し全ゲノム検査に用いています。

そして、この解析ソフトウェアは国のゲノムプロジェクトにおいて基準の解析方法(統一パイプライン)として採用されています。

「Cゲノム」は、ゲノム医療に繋がるゲノム検査を目指して開発されたものであり「Cゲノム」のレポートは国内有数の病院からもその有用性を評価されています。cBioinformatics株式会社は遺伝カウンセラーや医療機関と提携し検査結果により重大なリスクがあった場合や発症後のサポート体制を整え、医療に繋がったゲノム検査を目指しています。

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